Technical

2025年05月16日

テクニカルコラム

テクニカルコラムNo.21 テクニカルコラム総集編

. はじめに

当社は、有機金属化合物の専門メーカーとして、技術セミナーやテクニカルコラムを通じて製品の技術情報や応用事例を発信しています。本稿では、20226月から202516日までに公開されたテクニカルコラムの総集編をお送りします。

Ⅱ. テクニカルコラムとは

テクニカルコラムでは、当社が製造販売する主力製品の一つである有機金属化合物(以下、当該化合物の当社製品名を“オルガチックス”と記述します)の理解を深めていただくことを一つの狙いとして、本化合物に関する技術情報や応用事例などを、最新の研究事例も適宜盛り込みながら紹介しています。

Ⅲ. 発行済みテクニカルコラムの概要紹介

20226月から20251月迄に発行した18件の各テクニカルコラムについて、要点を抜粋してご紹介します。

No.1  二酸化炭素を原料とした有機化学物質の合成における有機金属化合物触媒の利用

CO₂の有効活用として、有機金属化合物触媒を用いた化学変換が注目されています。本コラムでは、CO₂を利用した有機化学物質の合成における有機金属化合物の触媒として効果について解説しました。特に、オルガチックスを用いた触媒システムの特性や選択性を向上させるメカニズムを紹介し、持続可能なプロセスの構築に向けた応用を議論しています

No.2  ペプチド合成に有用な有機金属化合物触媒

ペプチド合成では、高選択的かつ高収率が達成可能な触媒の開発が求められています。本コラムでは、有機金属化合物触媒を活用したペプチド結合形成技術を紹介し、ペプチド合成触媒としてのオルガチックスの可能性について詳述しました。

No.3  オルガチックスを使用した原子層堆積法(ALD)による金属酸化膜形成の可能性

原子層堆積法(ALD)は、ナノスケールの膜厚制御が可能な成膜技術として注目されています。本コラムでは、オルガチックスを前駆体として利用した金属酸化膜形成技術を紹介しました。特に、均一な膜質の実現や密着性の向上におけるオルガチックスの効果、半導体・光学デバイスへの応用の可能性について詳しく解説しました。

No.4  微細加工表面への離型性付与の可能性「オルガチックスSIC-434

微細加工技術において、離型性の向上は重要な課題です。本コラムでは、オルガチックスSIC-434を利用した離型性付与技術について解説しました。オルガチックスの特性と基材との相互作用、耐久性向上のメカニズムを詳しく説明し、金型や電子部品などの製造プロセスへの応用可能性について言及しました。

No.5  有機チタン化合物を使用したリチウムイオン二次電池用チタン酸リチウムの合成

リチウムイオン二次電池の性能向上には、安定した電極材料が必要です。本コラムでは、有機チタン化合物を利用したチタン酸リチウム(Li₄Ti₅O₁₂)の合成プロセスを紹介しました。オルガチックスは液状であるため、組成のバラツキが無いチタン酸リチウムを合成ができる可能性があり、高耐久性と高容量化に貢献できると考えられます。

No.6  チタン、ジルコニウム化合物を使用した有機無機ハイブリッド材料

有機無機ハイブリッド材料は、光学・電子材料分野での応用が進んでいます。本コラムでは、有機チタンや有機ジルコニウム化合物を使用して得られる有機無機ハイブリッド材料の特性を解説しました。

No.7  UV照射による酸化チタン膜の形成

酸化チタン(TiO₂)は、光触媒や透明導電膜として利用されています。本コラムでは、UV照射を用いた酸化チタン膜の形成技術を紹介しました。具体的には、チタンアセチルアセトンキレートを利用したUV照射による酸化チタン膜形成例について述べています。

No.8  PFAS代替としてのオルガチックスの可能性

PFAS(ペルフルオロアルキルおよびポリフルオロアルキル物質)による環境問題が注目されており、PFASを代替可能な材料の開発が求められています。本コラムでは、オルガチックスを活用した撥水・撥油特性を持つ材料の開発について解説し、PFASの代替可能性について考察しました。

No.9  有機チタン・ジルコニウム化合物のゾルゲル反応によるオリゴマー化合物の合成

ゾルゲル法を利用した高分子材料は、コーティングや光学材料分野での応用が広がっています。当該材料の原料の一つであるオリゴマー化合物は、その分子量の大きさ故に製膜時の揮発と膜収縮が抑制できることから、マイクロクラックや白化が起こりにくいのが特徴です。本コラムでは、有機チタン・ジルコニウム化合物を用いたオリゴマー合成技術を紹介しました。

No.10  ジルコニウムアルコキシドを用いたゾルゲル反応による耐アルカリ性膜形成の可能性

耐アルカリ性を持つ膜材料は、電子部品や建築材料としての需要が高まっています。本コラムでは、ジルコニウムアルコキシドを用いたゾルゲル反応による耐アルカリ性膜の形成技術を解説しました。

No.11 ミストCVD法による成膜技術とオルガチックスの展開可能性

ミストCVD法は、精密な薄膜形成を可能にする技術です。本コラムでは、ミストCVDの基本原理や従来の液相法や気相法との違いについて解説しました。オルガチックスを前駆体として用いた場合の成膜特性や適用の可能性についても述べ、新たな金属酸化膜形成方法として紹介しました。

No.12 有機金属化合物オルガチックスとポリイミドの有機無機ハイブリッド材料の合成

ポリイミドは高耐熱性を持つ材料として広く利用されています。本コラムでは、誘電率向上を目的としてチタンアルコキシドやチタンキレートを用いた、ポリイミドとの有機無機ハイブリッド材料について紹介しました。

No.13 ルイス酸触媒としての有機金属化合物の利用

ルイス酸触媒は、有機合成や高分子反応において重要な役割を果たしています。本コラムでは、オルガチックスで使用されているTiZrAlの金属元素に着目し、ルイス酸の強さと触媒活性について考察した内容を紹介しました。

No.14 ペロブスカイト太陽電池へのオルガチックスの利用

ペロブスカイト太陽電池は、高効率・低コストの次世代太陽電池として注目されています。しかしながら、鉛の使用、並びに水、酸素、光、湿気等による劣化、さらには低い発電効率といった課題があります。本コラムでは低い発電効率の課題解決に向け、ペロブスカイト結晶と接触する“電子輸送層”に着目しました。当該層のポーラス型への形態変更に伴うペロブスカイト結晶との接触面積の増加、そして電極と接触する同層の結晶構造緻密化による面内方向の電子移動効率改善という2つのアプローチに対する、オルガチックスの展開可能性について紹介しました。

No.15 接着・密着性向上の原理とオルガチックスの応用

接着・密着性向上は、コーティングや電子材料において重要な要素です。本コラムでは、現在でも不明な点の多い接着・密着性の原理を説明するとともに、オルガチックスを用いた密着性発現は、遷移金属への配位、並びに基材に存在する官能基との共有結合に起因するという考察を紹介しました。また密着性向上には、安定性を考慮してキレート化合物を選定することが望ましい、という技術的観点にも触れています。

No.16 ペロブスカイト太陽電池の適用事例、並びに課題と技術的対策

本コラムではペロブスカイト太陽電池について再度取り上げ、その安定性や耐久性に関する課題を整理し、これらの課題を克服するための技術的な対策について紹介しました。湿度に対しては封止材によるペロブスカイト結晶の保護、熱に対しては当該結晶中の耐熱性低下の一因となる含有材料の有機物から無機物への変更、そして光に対してはスパッタや無機粒子含有の塗布駅によるUVカットコーティングの活用が挙げられることを述べました。

No.17 中国で開催された国際高機能素材展2024 出展報告

中国で開催された国際高機能素材展2024は、最先端の機能性材料が一堂に会する展示会として、多くの企業や研究機関が参加しており、当社も出展しました。本コラムでは、当社が出展した製品や技術の紹介を行い、来場者の反応や関心の高かった分野について報告しました。また、展示を通じて得られた市場の動向や技術ニーズについても触れ、今後の製品開発や技術展開に活かすべきポイントを紹介しました。

No.18 ケミカルリサイクルにおける有機金属化合物触媒の利用

ケミカルリサイクルは、廃プラスチックを化学的に分解し、新たな原料として再利用する技術として注目されています。本コラムでは、有機金属化合物触媒がこのプロセスにおいて果たす役割について解説しました。シクロペンタジエニルと塩素を含むCpTiCl3CpC2Me)を触媒としてポリエステル解重合ができたという研究を一例に、ルイス酸触媒であるオルガチックスの適用可能性について考察しています。

. 最後に

当社のテクニカルコラムでは、当社製品である有機金属化合物「オルガチックス」を中心に、最新の研究成果や応用技術を幅広く紹介してきました。単なる製品情報の提供にとどまらず、業界の課題解決や新たな応用分野の提案を通じて、研究者や技術者の皆様に役立つ情報を発信することを目指しております。今後も当社の技術や知見をもとに、引き続き有益な情報を提供していけるよう努めてまいります。テクニカルコラムを通じ、有機金属化合物であるオルガチックスにご興味を持っていただくことはもちろん、当該化合物の応用検討にご活用いただき、ひいては有機金属化合物関連技術の発展につながればと期待しています。

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