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2022年12月29日

テクニカルコラム

テクニカルコラムNo.5 有機チタン化合物を使用したリチウムイオン2次電池用チタン酸リチウムの合成

テクニカルコラムNo.5では、有機チタン化合物を使用したリチウムイオン2次電池用チタン酸リチウムの合成についてご紹介します。

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Ⅰ. 液状の有機金属化合物を用いたリチウムイオン電池の長寿命化

従来のリチウムイオン電池には、電解液が使用されており発火リスク等の問題がありました。安全性の観点から、最近では半固体電池、全固体電池が注目されています。特に半固体電池においては、ゲルポリマーを使用することで、高い安全性とともに、従来よりも特性が優れた電池が開発されています。
このようなリチウイオン電池には、正極、負極材料が必須であり、負極材料として‟チタン”を使用した材料が検討されています。

Ⅱ. 長寿命化のカギとなる負極材料としてのチタン酸リチウムとは

携帯電話、ノートパソコン等の携帯機器の開発に伴い、高容量で小型軽量な二次電池のニーズが高まっています。二次電池の容量向上、長寿命化については様々な材料を使用した検討が行われています。

チタン酸リチウムは、リチウムイオン2次電池の負極材料として実用化され始めています。その構造は、Li4Ti5O12であり以下のような構造となります。

図1. チタン酸リチウム(Li4Ti5O12)の化学構造

チタンは、‟結晶格子の構造やサイズを変化させずにリチウムイオンを吸着、放出できる材料”のため炭素系負極に比べて容量や寿命の低下が起こりにくいと考えられています。

Ⅲ. 固相反応法によるチタン酸リチウムの合成の概要と課題

チタン酸リチウムの合成方法としては、固相反応法が最も多く用いられています。その他に共沈法、水熱法、スプレードライ法、噴霧熱分解法等があります。合成方法を図示したものを図2に記載します。

出典:福井大学リポジトリ[酸化物系リチウムイオン電池負極材料に関する研究(2012年3月)p.5

<図2. チタン酸リチウムの合成方法>

固相反応法では、酸化チタンや酸化リチウム等の固体を原料として用います。固体を混合する本方法では、得られるチタン酸リチウムの組成にバラつきが生じやすいと考えられます。組成のバラつきを少なくする方法としては、混和しやすい液状化合物の使用が考えられます。

Ⅳ. 液状の有機チタン化合物を用いたチタン酸リチウムの研究例と提案

当社が取り扱っている有機チタン化合物のほとんどは‟液状”の化合物です。
この液状化合物は、加水分解、焼成により酸化物を得ることができます。そのため、チタン酸リチウムのような複合金属酸化物を合成する際に、必要な液状化合物を混合して使用すれば、固相反応法よりも組成のバラツキが少ないチタン酸リチウム等の複合金属化合物が合成できると考えます。

<図3. 有機金属化合物 オルガチックスの外観>

液状のチタン化合物であるチタンアルコキシドを使用した例として、福井大学 山田基文氏の「酸化物系リチウムイオン電池負極材料に関する研究」があります。本研究は、チタン源としてチタンテトライソプロポキシド、リチウム源として硝酸リチウムを使用しており、噴霧熱分解法にてチタン酸リチウムを合成していました。

この研究例のようにチタンアルコキシドのような熱分解しやすい化合物を選択する方法もありますが、加水分解性が速いため扱いにくい面もあります。使いやすさから考えるとチタンアルコキシドよりも反応が穏和なアセチルアセトンやアセト酢酸エチル(エチルアセトアセテート)等のチタンキレートを選択することも考えられます。

<図4. チタンアルコキシド、チタンキレートの化学構造>

また、昨今のVOC規制やカーボンニュートラル等の観点より、水溶性の化合物に注目が集まっています。乳酸やアルカノールアミンのチタンキレートは水溶性化合物であるため、チタン酸リチウム等の複合金属酸化物を水系で合成する原材料として有用と考えております。

水系チタン化合物

<図5. 水溶性チタン化合物の化学構造>

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