Technical

2022年07月13日

テクニカルコラム

テクニカルコラムNo.2 【ペプチド合成に有用な有機金属化合物触媒】

テクニカルコラムでは、当社製品に関係する技術のご紹介を行ってまいります。

2019年に中部大学 山本研究室よりタンタルやチタン化合物といった有機金属化合物を触媒として使用した革新的なペプチド合成法の研究成果が発表されました。

<参考文献>
Substrate-Directed Lewis-Acid Catalysis for Peptide Synthesis Muramatsu, W.*; Hattori, T.; Yamamoto, H.* J. Am. Chem. Soc. 2019, 141, 12288.doi: 10.1021/jacs.9b03850

ぺプチドとは、図1のような構造の化合物であり、医薬品の他、化粧品や農薬等の様々な製品の原料となる化合物です。

                                         

<図1 ペプチドの一種 アラニルグリシルフェニルアラニンの構造>

              

しかし、従来の合成法では、以下の問題があり、非常に高価な物質でした。

① ペプチドの構造異性体であるラセミ化合物が生成されやすい。
② このラセミ化合物は分離することが難しく、大量合成に向かない.

今回の発表では、有機金属化合物を触媒とすることで、ラセミ化合物の生成が無く、工業的に大量合成できる可能性が大きい非常に有用なものであると考えます。

本コラムでは、触媒を有機金属化合物とすることでラセミ化合物の生成を防ぐペプチドの合成方法についてその概要を述べていきたいと思います。

                  

Ⅰ. ペプチド合成における有機金属化合物を触媒とした事例

従来のペプチド合成方法と有機金属化合物を触媒とした合成方法を図2に示します。詳細は以下リンクをご参照ください。

                                 

*Chem-Stationから引用(転載)

リンク先:Chem-Station の記事ページへ

<図2. 従来のペプチド合成と有機金属化合物を触媒とした合成スキーム>

                           

この反応において、図2catに示されるように、タンタルやチタンの有機金属化合物が使用されています

研究論文では、触媒中の金属が、酸素原子の電子対を受け入れて配位結合を作った反応中間体がラセミ化を防いでいます。

すなわち異性体の分離が不要となるため、工程の簡略化につながり、大量合成が可能となります。

このことよりペプチドの生産コストの大幅な削減となり、医薬品、化粧品、農薬など様々な製品の低価格化につながることが期待できます。 

                 

Ⅱ. チタン化合物の選択

この研究論文では有機金属化合物の中でチタンに注目すると、チタンテトライソプロポキシドというアルコキシド化合物を使用していました。このアルコキシド化合物の種類と反応性について少し述べていきたいと思います。

チタンアルコキシド化合物には、複数の種類があり、その一例を図3に示します。図に示した通り、構造の違いによって反応性に差が出ることが知られています。

                       

<図3 チタンアルコキシドの種類と反応性>

                                      

今回のペプチド合成では、チタンテトライソプロポキシドを使用していましたが、反応性を考えて他のアルコキシド化合物を触媒とすることで、穏和な条件での反応や収率の向上につながる可能性もあると考えます。

弊社では、チタンアルコキシドの他、ジルコニウムやアルミニウムのアルコキシドも取り扱っており、同様な反応が期待できます。今回のペプチドの合成に限らず、各種反応における触媒についてご相談がありましたら問合せフォームよりご連絡ください。

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