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2022年10月31日
テクニカルコラムNo.4では、オルガチックスSIC-434を用いた微細加工表面への離型性付与の可能性についてご紹介します。
オルガチックスSIC-434は、Si-NCOの化学構造を持った特殊なケイ素化合物のイソシアナトシラン化合物を硬化剤とした縮合型シリコーン系離型剤です。
イソシアナトシランは、空気中の水分と反応してSi-O-Siの膜を形成します。また、シリコーンオイル中の水酸基、基材表面の水酸基や吸着水と反応して密着性を発現します。
図1. オルガチックスSIC-434を用いた離型膜の製膜
近年、表面の微細加工技術として“ナノインプリント法”が注目されています。ナノインプリントによる表面の微細加工技術は、マイクロレンズ、反射防止膜のような光学材料の他、半導体回路作成への応用が検討されています。
このナノインプリント法は、図2に示す以下の手順によって微細構造を得ることができる方法です。
得られた微細構造のパターン倒れや破壊を防ぐために、モールドをより弱い力で容易に剥離する必要があります。そのためモールド側に離型膜を形成させます。
現在、この離型膜の形成にはフッ素系の離型剤が使用されています。
フッソ系離型剤を使用しますと、薄膜で離型膜を形成することができます。薄膜であると、微細構造の寸法安定性を保つことができます。ただし、一部のフッ素系材料(PFOA)は、REACH規則による規制、化審法第一種特定化学物質としての規制等の対象であり、今後も規制される対象物質増えることが予想されます。
この規制対象にならない離型剤としては,“シリコーン系離型剤”があげられます。以下表1に各種離型剤の膜厚の違いを示します。
表1. 各種離型の硬化膜膜厚
離型剤 | 膜厚(nm) |
オルガチックスSIC-434 (縮合型シリコーン系) |
31~65 |
付加型シリコーン系離型剤 | 100~1000 |
フッ素系離型剤 | 10以下 |
シールの台紙などに使用される付加型シリコーン系離型剤は、膜厚が厚いことが分かります。
膜厚が厚い場合、剥離時に離型膜内で「層間剥離」し、破壊された一部の離型剤が微細構造に付着することで、寸法安定性に悪影響を及ぼす可能性があります。
表1で示された数値の通り、フッ素系離型剤は膜厚が薄いためレジストと離型剤膜間の「界面剥離」が主となり、当該膜の「層間剥離」が起こりにくいと考えられます。そのため、薄膜を形成できるフッ素系離型剤を用いることで、微細構造寸法に対する影響を抑制することが可能と考えられます。
各離型膜の剥離機構は図3をご参照下さい。
図3. 各離型膜の剥離機構
フッ素系離型剤、並びに付加型シリコーン系離型剤と比較し、縮合型シリコーン系のオルガチックスSIC-434はフッ素系離型剤よりも厚膜ではありますがその数値は31から65nmであり、付加型離型剤より膜厚が薄いという結果が得られています(当社評価による)。このため、オルガチックスSIC-434は付加型シリコーン系離型剤と比較した場合、離型膜の凝集破壊を起こさずにレジストを離型させやすいと期待され、その結果として高精度の微細寸法を維持できると推定します。
ここまでの話について、各離型剤の考えられるメリット・デメリットのまとめを表2に示します。
表2. 各離型剤の考えられるメリット・デメリット
離型剤の種類 | 考えられるメリット | 考えられるデメリット |
オルガチックスSIC-434 (縮合型シリコーン系) |
付加型シリコーン系離型剤と比較して膜厚は薄いため、微細構造の寸法安定性を保ち、パターン倒れを生じにくい。 | 水との反応性が高い「シリルイソシアナト化合物」が空気中の水分により加水分解されるため可使時間が短い。 |
付加型シリコーン系離型剤 | 安価であり、可使時間も長い。 | 膜厚が厚いため、微細構造の寸法安定性の担保が難しく、パターン倒れを生ずる可能性がある。 |
フッ素系離型剤 | 非常に薄膜であるため、微細構造の寸法安定性を保ち、パターン倒れを生じにくい。 | 高価であり、今後法的規制を受ける可能性あり。 |
以上の通り、オルガチックスSIC-434は薄膜形成が可能で、離型性と基材との密着性を両立させることができる材料です。ナノインプリントの離型剤としての活用が期待されます。
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