Technical

2021年03月29日

研究G技術通信

技術通信 No.2 「結晶状有機金属化合物の溶液化]

MFC技術通信は、当社の日々の実験・考察から得られた、ちょっとした発見や新しい利用方法の可能性について、皆様に発信していくものです。

有機金属化合物の中で、化学構造に立体対称性を有するものは、結晶(固体)を生成することがあります。結晶状化合物は、無溶剤という側面をもっていますが、反応系において不均一な状態で存在するため、均一性を担保するために溶媒等に溶解させて使用するといった一手間が必要になります。結晶、液状においては両者にそれぞれの利点があるので、性状を自由にコントロールできると便利ですよね。

今回の技術通信では、この立体対称性を崩すことによって結晶状化合物を液状化合物にできるのではないかとの仮説をもとに実験した事例について紹介します。

当社製品のオルガチックスZC-150(ジルコニウムテトラアセチルアセトネート)は、ウレタン化触媒や食品包装用インキなどの架橋剤として使用されています。本製品は、図1.で示すようにアセチルアセトン基が対称に存在しているため、結晶性固体の性状であり、トルエンには5wt%程度溶解するものの、他溶剤に対する溶解性は低いことが知られています。この対称性を崩すことによって、①液状化合物、②溶解性の向上がはかれると考えられます。今回は、図2.に示すβ-ジケトン化合物のジピバロイルメタン(以下DPMと略す)とZC-150との反応による対称性変化有無の検討事例を紹介します。

今回の実験例は、20wt%の濃度でZC-150DPMを混合後、60℃で反応した例です。本組成物は加熱により溶解しましたが、FT-IRを測定すると、構造変化が生じていることがわかりました。FT-IR測定結果を図3.に示します。

ZC-150とは異なるC=OZrに配位したピーク(1620cm-11605cm-1)が認められることから、すべてのアセチルアセトン基ではないものの、キレート交換反応が生じていることがわかります。本結果は、一部のアセチルアセトン基がDPMに置換され、構造として対象性が崩れていることを示唆しています。この対称性変化によって、DPMに溶解し、液状組成物が得られたと考えています。今回は、本化合物の単離までは至っていませんが、液状化合物になっている可能性があります。今回は一例としてDPMZC-150の反応による液状組成物について述べましたが、他化合物との反応による溶液化の可能性もあると考えています。

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