Technical

2023年03月01日

テクニカルコラム

テクニカルコラムNo.6 チタン、ジルコニウム化合物を使用した有機無機ハイブリッド材料

テクニカルコラムNo.6では、有機チタンやジルコニウム化合物を用いた有機無機ハイブリッド材料の合成についてご紹介します。

本記事に関するサンプルのご用命、ご質問等は以下のページからご相談ください。

Ⅰ. 有機無機ハイブリッド材料とは

有機無機ハイブリッド材料とは、分子レベルやナノレベルで有機成分と無機成分が混合、または結合してお互いの性能を相乗的に高める、もしくは各構成材料が有していない性能を発現することを目的に設計された複合材料の一種です。

Ⅱ. ケイ素化合物を使用した有機無機ハイブリッド材料

有機無機ハイブリッド材料中の無機材料の前駆体として、テトラエトキシシラン等のアルコキシシラン類を用いることがあります。本物質は、加水分解重縮合反応により無機物質であるシリカ結合(-Si-O-Si-)nを作ることができるため、有機樹脂中に組み込むことで樹脂の耐熱特性や、放熱等の熱伝達を高める熱伝導特性を向上させることができます。本材料は電子部品の放熱材料や放熱シート等として実用化されています。

Ⅲ. 有機チタン、ジルコニウム化合物の有機無機ハイブリッド材料への応用

当社製品の有機チタン、ジルコニウム化合物もケイ素化合物と同様にアルコキシ化合物があることから、図1のように、水との反応によって、ケイ素化合物と同様にメタロキサン構造(-M-O-M)nを形成することができます。これらの化合物も有機無機ハイブリッドにおける無機材料の前駆体として使用できる可能性があります。

<図1. チタンアルコキシドと水の反応による加水分解重縮合>

Ⅳ. 有機チタン化合物を使用した有機無機ハイブリッドの例(高屈折率材料)

有機チタン化合物を使用した有機無機ハイブリッドの例としては、チタンアルコキシドを使用した樹脂の高屈折率化技術が九州工業大学 吉野耕二氏、山田修平氏により特許出願されています。(特開2010-208920)本特許は、PMMAの高屈折率化するものであり、チタンテトラエトキシドやチタンテトライソプロポキシドを用いてポリチタノキサン構造(-Ti-O-Ti-)nを形成することで酸化チタン由来の高い屈折率をPMMAに付与できる例です。

Ⅴ. 有機ジルコニウム化合物を使用した有機無機ハイブリッドの例
 (環境配慮型の高硬度・高屈折率材料)

一方で、有機ジルコニウム化合物を使用した例もあります。東京理科大学 郡司研究室の報告では、ジルコニウムアルコキシドにアセト酢酸エチル、2-ヒドロキシエチルメタクリレートを反応させた化合物を合成することで、熱重合可能な有機ジルコニウム化合物が得られる報告がされています。有機ジルコニウム化合物は、加水分解重縮合反応によりポリジルコノキサン構造(Zr-O-Zr)nとなり、また、ラジカル反応により2-ヒドロキシエチルメタクリロキシ基が重合し、アクリルポリマーを形成します。コーティング剤として使用することで、ポリジルコノキサン由来の硬度や屈折率をアクリルポリマーに与えることができます。

<図2. 有機ジルコニウム化合物を使用した有機無機ハイブリッドの合成>

文献:ジルコニウムキレートとアクリル酸類からの有機-無機ハイブリッドの合成と性質

本報告は熱硬化によって膜を形成しておりますが、UV硬化を併用して製膜する可能性もあると考えます。コーティング剤中の溶剤を揮発させるために、熱エネルギーは必要ですが、有機樹脂成分であるメタクリロキシ基の重合はUVエネルギーでポリマー化することは可能です。UV硬化は熱硬化に比べて、省エネルギーであり、VOC発生量も少ないため、環境配慮型の硬化手法を考えられます。本研究で得られた材料を応用すれば、部分的に熱エネルギーは必要ですが、UV硬化により製膜できるコーティング剤ができると考えております。

Ⅵ. 最後に

当社で販売しております有機チタン、ジルコニウム化合物は、今回述べました有機無機ハイブリッド材料の他、触媒、架橋剤、密着性向上剤等の様々な分野で使用されております。
今回ご紹介した、情報にかかる化合物の他にご要望にお応えするべく新たな化合物の合成も可能です。ご興味がありましたら、是非お問い合わせください。

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